※主人公=エイト
 船の事を調べにトロデーン城の図書館に向かっている途中のお話。







「イバラの城の御伽噺」


 昔このような話を聞いた事がある、と思った。何と言ったかは覚えていない。

いばらに覆われた城。

一目見た時は、正直気味わりぃ場所…と思った。
人間の形をした植物にじっと見られている気がして。

「なぁエイト、そんな見てまわらねぇで早く行こうぜ?」
前を歩くエイトに小走りで近づき、顔を覗きこんだ。

−ヤベェ。そう思った。

その表情は、悲しみややりきれなさや自己への猜疑心や、とにかく複雑に絡み合ったいばらのようなものだった。
エイトは俺の質問には答えずに、城のあるベランダをじっと見つめていた。

しばらくして俺が見ている事に気付いたらしく、慌てて持ってい
た剣を落としてしまった。

「どうしたよ、エイト?」

エイトは落とした剣を拾うと淋しそうに微笑んだ。

「あのね…俺は、ここに倒れてたんだ、あの日。」
あの日、といえばトロデーン城がドルマゲスによって呪われた時であろう。

「へー…。」

言葉が見つからずについ冷たく返してしまった事を後悔した。
エイトはそんな心情を察してか、苦笑し話を続ける。

「ねぇククール?俺呪い全然かからないでしょう?」

悪戯に微笑むその仕草に知らない感情が湧いた。
その感情を掻き消すかのように、ははっと笑った。
「そういや、そうだな。運が良くて羨ましいぜ。エイトぱふぱふもかからないもんなぁ。」

それは別の話、そうはっきり言われ頬を掻いた。
「別に強力な呪いがかかってると、他のはかからないらしいんだ。……俺には城に来るまでの記憶が無いから、きっと…。」
そう言うとまた顔を陰らせてしまった。
泣くのだろうかと思った。

だがしばしの沈黙の後エイトはニコリと微笑み、俺の腕に触れた。
「寄り道してゴメン。さぁ、図書館に行こう。」


心がざわつく。まるで呪いがかかった時のように、体に力が入らない。
抱きしめてキスでもすれば大半の女は落ちる。けど…けど、真っ直ぐな瞳はそんな狡さを許さない。

「好き…なのかな。」

そう小さな声で呟いた。声に出して何が変わる訳ではないのだが。
「え?どしたククール?」
前を歩く愛し君に、いつかこの気持ちを伝えられる日が来ませんように。そう思って苦笑した。
−不可能、だな。

いばらの城のお伽話は、悪者を倒して姫は眠りから覚める。
ドルマゲスを倒した後に、エイトのナイトで居るのは俺でありますように。
そう、月へ願った。





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