ヤバイ。

相当にヤバイ。

何がヤバイのかというと。

決まってるだろ。

俺の理性ってやつだ。


「悶々」


とかげ臭ぇし王子様はムカつくし、良い事無しだ。
「何でこうも面倒な事になるかなぁ…。」
一人呟きため息をつく。

本日、ククールさんは見張り番。
『ヤンガスはどうせすぐに寝ちゃうし、エイトは疲れてるし、あんたがしなさい。』
俺だって疲れてる、と言い返してはみたものの、ゼシカは鬼の形相で俺を見つめた。
『へぇ?エイトがあの馬鹿王子の相手してる時にあんたは何もしてなかったわよねぇ?』
…女と口喧嘩をするのは嫌いだ。
気の強い女を自分のものにするのは確かに気持ち良いぜ?
だけど、それとこれとは………
「違うんだよなぁ。」
そう言って乾いた地面に足を投げ出した。
上を見上げると、今日も憎らしく月は浮かんでいる。

「ククール」

ふいに後ろから声がし、振り向いた。
「…エイト。」
「やっぱり気になってさ。一人で見張りなんて退屈でしょ?」
そう言って、エイトは静かに俺の横に腰を下ろす。
「高い場所に居るからかなぁ。」
真っ直ぐな瞳で空を見つめ、ぽつりと呟いた。
「え?」
「ほら、星やお月様がよく見える。」
そう言って微笑み、俺と同じように足を投げ出した。
「ねぇ、こうしてククールと二人で話すのって初めてじゃない?」
俺は…誘われてるのかな。そう思ったけれど、エイトに限ってあり得ない。
第一こんなにニコニコして誘う奴なんて居ない。
大体はとろん、とした目で体を摺り寄せてくるんだ。
そういう女を俺が好きになるとでも思っているのか?
「そうだな。」
笑顔で返すとエイトはほっとしたように肩を上下させた。
「良かった…、ククール最近怒ってるみたいだったから…。」
怒ってる?俺が?
「どうしてそんな事……」
本当にわからなかった。
パーティーの皆には普通に接していたつもりだし、勿論エイトにだって…
そりゃあ、ちょっとは気になってるから普通には出来ていなかったかもしれないが。
もしかして、それを怒っていると勘違いしたんだろうか?
そうだとしたら…何だか凄く…可愛い。
「だってククール前は沢山触ってきたのに…あ、言い方おかしいけど!
 その、スキンシップが盛んな方でしょ?」
困ったように、そして必死に言葉を紡ぎ出そうとしていた。
チリ、と俺の欲情に火がついた気がした。
「エイトは触ってほしいんだ?」
そう言うと益々困ったという風に目を泳がせる。
「そ、そういうんじゃなくて……えっと、でも…そうなのかなぁ…?」
「そうなのかなぁって、俺に聞かれても。」
笑い声をあげてみた。エイトを安心させる為だ。警戒心を、削ぐ為。
「じゃあ、触ってみようか?」
エイトの頬に手を添えてみると、既に温度が上がっているのがわかった。
このままじゃ、ヤバイ!本気でパーティーのリーダー様に手を出しちまう。
そうは言っても止まりはしない。
「なぁ、照れてる?」
「ばっ…そんなっ……!」
真っ赤な顔をして俺の手を振り払うエイトがどうしようもなく可愛い。
――いつの間にこんなにも好きになってたんだろう。
「じゃあ、俺に欲情してるんだ?」
意地悪く口角を上げて笑ってみせた。


・・・・・・・・


翌日。
頬は痛いは外で転寝した所為でくしゃみが止まらないはで最悪だった。
「あんなに強く殴る事、無いと思うんだけど。」
さすった頬が未だにヒリヒリと痛む。
「お前俺よりレベルが高いんだしさ。」
前を歩くエイトさんにぶつぶつと文句をたれた。
そのくらいの権利、俺にはある。
「ねぇ、ククール?」
振り向いた顔は笑顔だったが何処か違っていた。
「メタルスライム、沢山倒してね。」
ニコッ、と笑うもザキを唱えられたような気分だった。


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